制作技術 Technicの最近のブログ記事

26.jpg 私はあまり雑誌は読まないが、広告が少なく内容の濃い「クーリエジャポン」は出張の移動中によく読む。

そして12月の記事で面白いのを見つけた。

"iPod 普及で「音楽がうるさい」"といった記事で、METALICAのニューアルバムの音圧をめぐって、ファンがミックスをやり直せ!と署名運動もしているとやら・・・。音がうるさすぎてニュアンスが伝わらないとのことだ。いわゆる「音圧戦争」といったことがここ数年勃発していることに起因する記事だ。こんな記事が音楽専門誌では無く一般紙に掲載されていることが興味深い。

私はiPodの初代から、シャッフル、iPhoneまで持っているが、今は音楽をこれらでは一切聴かない。

それは、シャッフルされることで制作の年代によって、音楽の音量バランスが大きく変わり、聴いていてイライラする。

そして異常なまでに音圧を上げられた音楽はのっぺりとしてつまらないし、何せ長時間聴くと疲れる。

ここ数年CDの売上は最盛期に比べると半分になっているらしい。アナリストたちは、人々の消費は携帯等にまわってしまい、CDに消費されなくなったという。でも私は音楽の音圧が異常に上がったことも一因するのではないかと考える。

聴いていて疲れるくらい音圧を上げた音楽は売れるわけがない。iPodで目立っても、ある程度の音響システムではとんでもないことになる。

私もよくマスタリングするが、クライアントは出来るだけ大きい音を所望する。大きい方が目立って売れるからだという。しかし本当に音圧が無いと売れないのだろうか?はなはだ疑問である。iPodの中で目立つことと売れることは違うと思うのだが・・・。

音圧を上げるプラグインも最近は驚くくらい音圧を上げていける。

RMSでピークが-6dBといった、恐ろしいことが簡単に出来てしまう。そしてそんな作品が蔓延している。

人々の耳の健康のためにも、ボブ・カッツ氏の提唱するK-SYSTEMがこの業界で標準になればいいのに!と思うが、競争社会、やはり難しいのだろう。

私の場合、マスタリングするときにRMSを-10dB近辺にピークをもってくるようにする。

そうすればiPodでも、ちゃんとしたシステムでもある程度は聴ける。若干音圧は低く感じるかも知れないが音楽的要素はちゃんと残るし。ボリュームを上げると気持ちよいラウド感が得られるのだ。

これらをちゃんと説明すればクライアントも最近は納得してくれる。

健全な音楽産業が発展するためにも、私たち作り手側がちゃんとした意識を持たなければならないのかもしれない。

しかし、いろんな意味でiPodの功罪は大きい。



注)最近、マスタリングとは「音圧を上げること」と思われがちだが、本来はマスターを作成するために行なわれる作業の一環のことを指し、若干意味合いが変わってきている。

ディザーの功罪

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ディザーとはハイビットレートでレコーディングした時、その質感をそこそこ残してダウンコンバートするために加えるデジタルノイズのこと。

ノイズを加える??と思う人もいると思うが、たとえば、24bitでレコーディングしたものを16bitに落とすとき、このディザーを加えると明らかに24bitの質感を残して16bitにダウンコンバートされる。いわゆる、小さい音にちゃんと伸びが残るのだ。

Steinberg社のCubaseはVST5くらいだったかな?このディザーが標準で搭載されるようになった。最初は何のことか良くわからず、理解に苦しんだが、Cubaseはこのころから内部処理を32bitで行なうようになり、その利点を生かすためにこの機能を盛り込んだんだと思う。

24bitでレコーディングをし32bitで内部処理し、ディザーをかけて16bitで吐き出す・・・。なんのこっちゃと思う人も思うが、私のワークフローの中でこれが一番音が良いように思うのだ。

しかもこのディザーのメーカーはなんとAPOGEE社!APOGEEといえば、コンバーター界のルイ・ヴィトン。ProToolsの出始めのころ、音の輪郭がぼやけないということでレコスタはこぞってAPOGEE社のAD8000というADコンバータを使っていた。いまだ愛用者が多い名機でもある。(ルイ・ヴィトンというだけあってやはり高い!)そのAPOGEE社のディザーである。

女の子がルイ・ヴィトンなら間違いない!と思うように私もほぼその効果を絶対的に信じていた。

現在スタジオはNUENDO4がメインシステムとなっているが、もちろんこのAPOGEE社のUV22HR(昔はHRは無かった。)が標準で搭載されている。そしてマスターのエフェクトラックには当然のようにこのUV22HRを毎回挿している。

アシスタントがこのUV22HRを挿すのを忘れようものなら「アホ!」と突っ込むくらいである。

で、今回あるプロジェクトで24bit、96KHzで作業進めていた。いつもなら、そのままMIXをしもちろんこのディザーを通してMASTERING用のデータを吐き出すのだか、今回はめずらしく外部のスタジオでMIXすることになりすべてのデータをトラック別に吐き出したのだ。

データは24bit、44.1KHzで欲しいとのこと、32bitから24bitにダウンコンするのでUV22HRをちゃんと24bitに設定するようにアシスタントに指示した。

すると、アシスタントがいくつかのトラックで変な音がするというのです。たまたま出張中に作業をアシスタントに頼んでいたので、何かをやらかしたな!?と思ってスタジオに戻ってきたのですが、プロセスは合っているし何の問題も無いのに確かに音がおかしい。

特に今回コンガのトラックにこのコンバーターにかますと、なんと言うか飽和感というか、音が割れ気味というか、にじむというか、しっくり来ない。

で、外してみたら?と言ってみると、なんと!音はきれいにコンバートされているではないか!!

参った! えー、ディザーをかまさない方が音が良いんすか?って感じです。

今まで確かに32bitを16bitには変換していたものの、32bitから24bitに変換したことはあまり無くこんなことに気付かなかった。(原因はどうもこれっぽいが、断定はせず。)

ただ、困ったことに他のトラックには問題が無かったりする。たとえばギターやボーカルにはそんな症状は出ない。今回はコンガといくつかのトラックにだけしか症状が出ないのだ。

症状が出たり出なかったりする。今まで妄信的にこのディザーを信じていたが、今日限りこれからは疑ってかかることにした。ま、今までまじめだったヤツがたまたま風俗に行って、運悪く嫁にばれた状況みたいなものだ。(私のことではないのであしからず。)

人間とは不思議なもので妄信的になると落とし穴があったりする。ここ数年何の疑いも無くこのUV22を使っていたが、これからは耳で確かめてからディザーを挿すこととしようと決心した。

いやーデータ提出が1日遅れてしまったが、気付いてセーフ!アシスタントに感謝。

もう、これからはディザーを挿し忘れてもやさしくします。

   19.jpg参考までにディザーの原理はこちらから・・・。
http://www.aegweb.it/apogee/html/AV22.html

http://www.apogeedigital.com/products/uv22hr.php

http://www.apogeedigital.com/pdf/uv22_process.pdf

 

12.jpg

前のトピックでTransient Designerを取り上げたが、その中でBBEのことに触れたのでそのことについて詳しく書いてみよう。(BBEについてはダイナミックプロセッサーではなくエフェクトではないか?と思う人もいますが、あえてここではダイナミックプロセッサーとします。)

ダイナミックプロセッサーは音の変化が地味だと書いたが、このBBEはTransient Designerと同様とにかく音が派手に変わる。20年以上前からあるプロセッサーで、私もごたぶんに漏れず、高校生時代からBBEは使っていた。初めて使ったときは衝撃だった。

80年代J-POPでは必須アイテムで、最近復活した米米クラブの石井氏が当時好んで使っていたのを覚えている。

詳しいプロセス方法についてはこちらを参照してほしい。

http://bbesound.jp/techbbe/

技術的なことはあえてここでは書かない。(ディレイを使っているとのこと、ダイナミックプロセッサーか?といわれそうだが、私はダイナミックプロセッサーとしてBBEは考えたい。)

とにかくEQでは無い。音が前に出てこないなぁ~なんてときには、こいつ一発で前に出てくる。不思議だ。

ただ、問題もある。過剰に使えば音がやせる。マスターにかけることは厳禁だ。大変なことになる。

一時、使用頻度が下がったプロセッサーだが、プラグインで見事復活した。

で、今やこのBBEは私のワークフローではヘビーローテーション。外せない。

アウトボードは使われること無くホコリをかぶって倉庫に寝ているが、プラグインは大活躍中だ。

なんとなく皮肉だ。

参考までにこのプラグインはオンラインでたったの$129・・・。

なんとなく嬉しい。